
ひとくちに「工場」と言っても、様々なものを作る仕事があります。今回は丹波市で約70年、3代に渡って化学を専門に事業を行ってきた土田化学さんを訪れました。一般的な工場のイメージとは少し違うな、と思った笑顔がたくさん飛び交う仕事場や、まちづくりのことにも積極的な社長にお話を伺ってきました。
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・社長が関わるのは、会社とまちの仕事。
・働きに来てくれる人に合わせて、様々な働き方を検討できる。
・職場の笑顔を大事にしたい。社長の想いとは?
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本日は、土田社長にお時間を頂き、お話を伺ってきました。
化学というと、ちょっと想像がつかないのですがどんな物を作っておられるのでしょうか?
例えば作るのは、照明のプラスチックのカバーとか、ホックのボタン等も。そういうのが元々うちの仕事。
化学やけど、一から考えてというよりは、お客さんの所に行って「こんな規格がありますよ。じゃあこれ作るのにいくらかかりますかね。」と営業で話をしてきて、それを製造する、という仕事が中心やね。
従業員さんの仕事としてはどんなお仕事があるのでしょうか?
工場の方は、現場で製品を成形するのが仕事なので、その技術を高めていってもらう。工場の方に入ってるのは男性が多いね、他に、ちょっと傷があったりするので、不良品がないか確認する検品の仕事。検査は女性が多い。
技術の継承をしていかなければいけないので、機械のオペレーターの仕事は力を入れて募集したい。
それから、事務管理できる子や、女子の営業があってもいいんじゃないかなと思ってる。例えば営業は今まで社長の僕と営業の担当さんの2人だけでやってきてて。例えばそこに入ってもらったとしたらどの仕事でもそうやけど、一つずつ教えていく。そんなに知識がめちゃくちゃいるわけではないから、そんなに難しくないし、新規のところに飛び込みに行ってこい、みたいなのはあんまりないので、打ち合わせしてお客さんと決めていく仕事がほとんどかな。こんな物作れませんかね、やってみます、っていう。
事務と職人さんのお仕事、それぞれどんな方が向いていると社長は思われますか?
どちらもそうで、素直に聞ける人が良いと思う。例えば、教えてもらう時に素直に受け入れてもらえないと、教える方もやっぱり教えよう、って思わなくなると思う。だから、言われたら一回やってみて、違うと思ったら違うと、それはもちろん言ってくれればいいなと。
ウチの会社だと、ブラジル国籍の子もいたり、中国の研修生もいたり。不器用やけど得意なこともあると思うから、得意分野を伸ばしていった方ができることは増えるし、いいと思う。
例えば機械でも掃除するのが細かいとこまで気がきく子もいるし、材料がどれくらいなくなってきた、というのもすぐ計算できる子もいるし、適材適所で得意なところを中心にやってもらうように、もちろんそれだけではないけど得意分野をメインに仕事をしてもらえたら良いなと考えてる。
社長のこれまでと、まちに関わる仕事の経験。
丹波市で生まれ育ち、ぼんやりと会社を継ぐものだと考えていた土田社長。約5年ほど服飾の卸業を生業とする会社で勤めてから、丹波市へUターンしてこられました。
最初は帰ってきて工場の仕事に入って、工具の名前すら知らなくて。当時の工場長は僕が生まれた時からいて、めちゃくちゃ厳しい人で、育てようと思って言ってくれてたと今ではわかるけど、もう理不尽なこともいっぱい言われたなあ(笑)めちゃくちゃ怖くて。
10年くらいしたころから、営業行ってこいって言われて。工場の中はひととおり見て、職人さんの仕事も入ったからわかるようになってるから、営業もできたり。結構厳しい下積み時代があったかな。
自分の得意分野として、技術より営業の方が強かったから、当時の工場長もそう思って外に営業行ってきたらええで、と言ってくれた。経営者としては中のことも大事やけど、外の方が大事やと思ってくれたんやろな。
生まれ育った家で家業があって、継ぎたくないと思ったことはありませんか?
最初はあったけど、やっぱり就職して、たまに帰ってきた時に、両親には言われないけど周りからのプレッシャーは感じてた。なんか継ぐんやろうなって。
大阪の仕事と比べて、丹波はやっぱりゆるくて、空気がゆっくり流れてる。都会の方が刺激的やから若い時はそれが楽しかったところもあるんやけど。
今、積極的にまちの活動に参加されているお話を聞きます。何かきっかけはあったのでしょうか?
商工会の青年部の部長になって、地域の中の会社の立ち位置を考えるようになったんやね。例えば息子に会社を継いでもらうにしても、Uターンして従業員として働きに来てくれるにしても、帰ってきたくなるまちを作るようにやっていかなければいけないと思うようになった。商工会とは別のある会社でまちづくり活動もしていて、もちろん仕事が優先だけど地元に還元していけるように動きたいとは思っている。全部が仕事につながるわけでないけど、自分の人格形成にはとても有意義だったと思う。
土田化学さんで働く谷垣さんは、丹波市山南町出身。アルバイトから入社し、事務の仕事をメインに、検査等の仕事をしておられます。社長はどんな方ですか?と伺ったところ、「優しくて、笑顔を大切にしようといつも声をかけてくれます。」とのこと。
この「笑顔を大切に」というのは会社全体で決めて実践していることなんだそう。「みんな良いなと感じています、社長が良い人だから頑張れるところはあるかなって思いますね。」とお話されている姿が印象的でした。
笑顔を大切に。工場全体で掲げるスローガン。
仕事上は厳しかったとしても、目を合わせた時にニコッとできる、そんな会社にしたいと思ってて。会社の中がぎくしゃくした雰囲気で、全体的な雰囲気が悪くなってきて売上も下がっていく、そういう危機があった。その時に、みんなで気持ちをひとつにしていいものを作っていかないと。一個が大事やで、検査が大事やでと。みんなで確認しあって声をかけあってやっていかないかんなと思って。
仕事をする職場を選ぶ時、どんな社長と一緒に働きたいか、という事も一つの選択の基準になるかもしれません。土田社長のお話や、会社全体で向かっていく方向の話を聞いていて、こんな場所で働くという選択も「いいな」と思わされる部分が多々ありました。